インタビュー

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【平塚俊樹さん (2)】 裁判員制度とトラブルに巻き込まれない方法

前回に引き続き、『Lawより証拠』の著者、エビデンサー・平塚俊樹さんにお話しをお伺いしました。

(聞き手:編集部 関)


◆前回のインタビューはコチラ

【平塚俊樹さん (1)】エビデンサーの仕事 ‐戦略的調査‐

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--では、ちょうど裁判員制度のお話が出たのでお伺いしたいのですが、率直にいってどうお考えですか?

私は絶対に必要だと思います。今お話したとおり、懲罰的賠償がないから日本の法律は機能していない部分があります。かといって、いきなり日本にもそれ(懲罰的賠償)を導入しましょうといっても、あまりに世の中が変わってしまいますから。そのために、裁判員制度を刑事裁判からやってみましょうということなんです。

--段階的に導入していくということですね?

要するに、市民が「自分の社会は自分で守ろう」という雰囲気にしていこうということが大事なんです。そのための第一歩です。親しくしていただいている弁護士から聞いたのですが、法務省と弁護士会、そして裁判所が三位一体となってこの改革を進めているんです。この三者が、同じテーブルにつくということはこれまでは考えられなかったことです。それくらい大きな改革なんです。ところが、マスコミは逆の方向にいってしまってる気がしますね。

--マスコミの論調は、裁判員制度は市民の負担になるとか、あんまり良くないとか…

結局、マスコミは売れれば、あるいは視聴率がとれればなんでもいいんですかね(苦笑)

--ところで、裁判員制度が導入されるということは、最終的には日本にも懲罰的賠償を取り入れようということなんでしょうか?

そういう方向に変えていかないと、時流に乗ったような違法行為…今で言うとオレオレ詐欺のような犯罪を取り締まれないということになりかねません。日本は、国会で立法しなくては新しい法律は制定されませんが、世の中の動きはそんなものではありません。極端にいえば、一日一日新しい犯罪が発明されているような状態なんです。

--では、裁判員制度なり懲罰的賠償が日本でも一般的になると何が良くなるのでしょうか?

慣習とか判例が法律になっていくという、いわゆるコモンローが一般化します。そうすれば、時流に乗って悪いこと、こいつは許せないなという人間を取り締まれるようになるんです。海外では、こうした考えは当たり前です。コモンローではない国でも、判例は重視されるものです。日本は、それに比べたら犯罪の増加にまったく追いついていないんです。
--わかりやすいように、時事ネタで考えてみたいのですが。裁判員制度が導入されていたとして、小室哲哉の事件はどうなっていたとお考えですか?

もっと、被害が少ない状態で何とかなっていたのではないでしょうか。これほど大きな事件にはならなかったでしょう。彼は著作権が関係していたので証拠が出てきましたが、一般的に詐欺罪の立証は非常に難しいんです。

--詐欺罪の立証が難しいというのは、例えば「そんなつもりじゃなかった」といってしまえば無罪放免と?

自白がないと、なかなか取り締まりは難しいようです。

--裁判員制度について、僕らもあまりわかっていないのですが…例えば先日の大阪のひき逃げ事件の犯人も執行猶予中でしたが、もっと違った結果になっていたのでしょうか?

言葉は悪いですが、このままだと犯罪者天国…とまでは言いませんが、やり得のような状態になってしまっていますよね。例えば、その事件だって懲罰的賠償とか、裁判員制度のように市民が法に参加していれば、無免許を繰り返した時点でもっと重罪になっていたはずです。でも、今の法制度ではそうはできない。人間の行動というのは非常に複雑ですから、その時々で臨機応変に変えなくてはいけないでしょう。警察や裁判所に、立法化させるということも考えていいのではないでしょうか。

--市民の参加というのを真剣に考えなくてはいけませんね。

アメリカ人はこういう意識が強いのですが、自分たちの生活は自分たちで守るという意識は大事です。今の日本は、残念ながら国や誰かが守ってくれるという時代ではなくなってしまいました。警察や弁護士だって、自分の身内ほどは親身に助けてはくれません。案件が多すぎて、みんないっぱいいっぱいなんです。
--そのために、エビデンサーが必要だし、もっといえば自分の身は自分で守るという意識が大事なんですね。

極端にいってしまえば、われわれにはノウハウなんて何も無いんです。ただ、どこまでも解決に向けてがむしゃらに動いているだけ。でも、今の世の中はそういう人は本当に少なくなりました。周囲に関心を持たなかったり、「自分は大丈夫」と根拠のない自信を持っていたり。だから、犯罪者は弱い者を狙って、とことん叩くんです。

--まずは、自分のことは自分で守るという意識を持つことから始めないといけませんね。

そういう意識を、日本人みんなが持ったときに…昔の日本は、そういう世の中だったと思うんです。今よりも、犯罪が少なかったと思いませんか?窃盗とかは昔からありましたが、今ほど重大事件はたくさんなかったですよね。

--例えば、オレオレ詐欺はいつまでたっても無くなりません。

これは、そう簡単にはなくならないでしょう。人間心理につけこんだ犯罪ですから。それから、法律というのは住民自治の上に成り立っているという原則があります。自治会とか隣組とか。しかし、今の時代はそれが崩壊しているから法律がうまく機能しないという側面もあります。日本の法律は古いですから。弁護士というのは、法律の通り動かなくてはいけません。ちょっと杓子定規すぎる人もいますが。一方で、法律だけではなくて、世の中の安全という視点で動くのが警察です。だから、両方をうまく絡めて考えないといけませんね。最近の、特に詐欺の犯罪者は弁護士をうまく利用しているんです。これは、弁護士も悪さをしているということではなくて、どうしたら法的に責められないかを事前に弁護士に確認しているんです。ところが、警察の視点で考えるとちょっと違う。一見、法的に問題が無いように見えても、たくさんの証言者が「この人は悪さしてました!」っていえば警察は必ず動きます。こういうことは、誰も教えてくれませんから、我々がなんとかその役割をしていけないかと計画しているところです。

--では最後に、もうすぐ年末でもありますし、お金の動く季節でもありますから、このインタビューをご覧の方に何かアドバイスをいただけますか。

犯罪者を寄せ付けないようにするには、自分のまわりを手ごわいヤツにするということです。犯罪者というのは、場所を選んでいます。入り込みやすい場所を。だから、入りやすい場所にしないということが大切です。専門家は誰しもいいますが、例えば空き巣を予防するには近所同士で声を掛け合うのが一番いいんです。あとは、そうじしてきれいにしておくことも効果があります。

--ほかとはちょっと違うぞという場所をつくるということですね?

専門家は、犯罪のおきやすい場所はすぐにわかります。典型的なのは、ゴミ置き場の奥とか、ゴミが散乱しているとか。要するに、人から見られにくい場所だなと、犯罪者は本能的にわかるんです。それを防ぐには、そういう場所を閉鎖するというのも一つの方策です。あとは、近所で情報共有することも大事です。みんなで地域を守ろうという意識が大事なんです。

--ありがとうございました。

(2008.11.11)
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■エビデンサーのホームページ

証拠調査士(エビデンサー)。武蔵野学院大学客員教授。

大学卒業後、大手不動産会社と東証二部上場メーカーに勤務。

在職中、営業職ながらクレーム処理も担当する中、あまりにも悪質な事件が多発したために警察の暴力団対策課にて対応トレーニングを積む。

その後、自ら欠陥住宅を買ってしまったことにより、大手ゼネコンを相手に弁護士も逃げ出すほどの死闘を演じ、最終的に完全勝利。この経験からトラブル解決のノウハウを確立する。

また、同様のトラブルを抱える人たちへのアドバイスを通じて、弁護士、弁理士、医師、鑑定人など、各ジャンルの専門家との間に人脈が広がり、そのネットワークは、アメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカといった海外にまで及んでいる。

これまで数千件にものぼるトラブルを解決に導き、現在も相談・依頼がひきもきらない。

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