• ホーム
  • コラム
  • 7/22号 特集:米経済いよいよ泥沼の様相―“嵐の8月”の気配に―

コラム

コラム一覧へ

■今週の市場展望

著者:青柳孝直事務所

7/22号

『特集:米経済いよいよ泥沼の様相―“嵐の8月”の気配に―』
  1. 7月13日、ポールソン米財務長官は、経営不安から株価が急落している政府支援機関(GSE)と呼ばれる米連邦住宅抵当会社(ファニーメイ)と米連邦住宅貸付抵当会社(フレディマック)について、必要であれば両社に公的資金注入して資本増強するとの緊急声明を発表した。
  2. ファニーメイもフレディマックも米国内の住宅金融に特化した会社で、政府の影響力が強い半官半民的組織で「政府支援機関=GSE」と呼ばれている。民間から買い取った住宅ローン債権を、住宅ローン担保証券(RMBS)に仕立て直して市場に売却する。
  3. 両社が保証したり、保有したりするRMBSの合計は、米住宅ローンの半分近い5兆2千億㌦(550兆円)。日本の国内総生産(GDP)に匹敵する。また社債も、米国債発行規模の3割強に当たる1兆6千億㌦(178兆円)に上る。
  4. 両社はともに株式を上場する民間企業だが、役割の重要性から発行する社債には暗黙の政府保証がついていて、経営が傾けば政府が元利払いを肩代わりすると見られている。これが海外投資家の保有が多い原因となっており、債務不履行の恐れが強まれば、ドル相場急落につながる大きな要因とされている。
  5. 米財務省によれば、外国人投資家が2007年6月末で保有するGSE債は1兆3050億㌦に上る。中国が3760億㌦、日本は2290億㌦。要は、国債並みに信用を売り物にしたGSE債に万一のことがあれば、ここ1年で2300億㌦あまり増やした世界各国の外貨準備に穴が開き、国際金融システムに激震が走る。また経常赤字の穴埋めを海外マネーに頼る米国にとって、ドルの信任喪失は死活問題となる。
  6. 今回の支援声明で、ドルに対する不安が解消されたわけではない。最近の市場では、巨額の投資マネーが世界を駆け巡っており、ドルへの信任が揺らぐと、実物資産の裏付けがある原油などの先物市場に投機マネーが流入する可能性は否定できない。ドル安と原油高の“負の連鎖”は簡単には断ち切れない。
  7. サブプライム問題により民間の住宅金融事業が急速に縮小する中で、米住宅証券化市場での公社などの政府系のシェアは08年5月に98.9%に達している。米の住宅価格は大幅な値下げが続いている。担保価値下落から焦げ付きが広がり、不良債権化を恐れ融資に慎重になるという“悪循環”から抜け出せないのが現状の米の状況である。
  8. ファニーメイとフレディリックは隠れていた米国の“裏側の”金融危機の様相を呈している。バブル時期の日本は、対策を小出しに打った。米国は日本よりはスピードが速いが、それでも後手に回った感は否めない。
  9. 週末に向け、株式市場は小反発はしている。いわゆる“押し目買い”が入った結果だが、根幹の問題は解決していない。“嵐の8月”になりそうな予感。目が離せない。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


書籍紹介

コラム一覧へ

ページの先頭へ戻る