■今週の市場展望
著者:青柳孝直
5/18号
『特集:箱根異変(!?)』
- 箱根山(神奈川県箱根町)とは東西約8㌔、南北約12㌔のカルデラ火山の総称である。その箱根山に対して気象庁は、噴火レベル1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げた。黄金週間まっただ中の5月6日のことである。
- 箱根山は過去8千年の間に少なくとも8回噴火したとされる。13世紀頃が最後と見られているが、ここにきて火山活動の継続を示す群発地震が繰り返し起きている。4月26日から増えだし、5日には最高の116回を記録している。
- 発生が心配される「水蒸気噴火」は、地表近くにある地下水の温度が急激に上昇し、蒸気が爆発的に吹き出すことで起きる。その蒸気を逃がすために岩石が吹き飛ばされることもある。昨年9月の御嶽山(長野県・岐阜県)の噴火では、山頂付近にいた登山客57人が死亡した例があり、箱根町でも警戒し始めた最中の出来事だった。
- 温泉あり、高原あり、湖水あり、今や世界的な観光地である箱根山には1950年~60年代には産業史に残る「箱根山戦争」が起きている。西武グループと小田急・東急グループが、箱根観光開発でまさに仁義なき戦いを繰り広げた。
- 西武側が自社有料道路の小田急バス乗り入れを阻止する、小田急側はロープウエーで対抗する芦ノ湖でも両陣営観光船が覇を競う…抗争がとめどもなく続いたのは箱根という土地の魅力ゆえに違いない。
- 今や世界的な国際都市・東京から電車で約1時間。箱根はまさに都会のリゾートではある。こうした例はあまり知らないが、自分が知っている限りでは、スイスの首都・ジュネーブ(レマン湖のほとりの金融中心の国際都市)から電車で約1時間のローザンヌあたりの環境だろうか。
- かの(日本の)1980年後半~90年前半の狂乱バブル時代、「箱根で温泉+ゴルフ」がゴールデン・コースだった。料金はハッキリ覚えてはいないが、相当に“馬鹿高かった”ことだけは覚えている。
- そして箱根を徹底的に全国区にしたのは、ご存じ正月恒例の東京・箱根間の駅伝競走である。もはや日本の正月の風物詩。東京のど真ん中から、箱根の山登りを経て、ゴールが芦ノ湖。翌日がその逆。往復200㌔超を10人が襷のリレーで走り抜く…考えてみれば「若いエネルギーの無駄遣い」と言えなくもないが、「それが箱根だから」が大きなテーマになっている。
- 前述の箱根戦争は、バブル時代を経てすっかり終息し、相争った両者が手を携える時代となっている。「エッツ、箱根が??」という騒動である。しかし考えてみれば「箱根は現役の活火山」だった。今回の騒動も“オール箱根”で立ち向かうと宣言している。人間が荒ぶる自然とどう立ち向かうか。人間が試されているのだろう。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。
連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
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書籍紹介
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ISBN:978-4-86280-068-8
定価:1,365円
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ISBN:4-89346-913-4
定価:2,520円