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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

12/01号

『特集:プロ野球の経済学 -プロ野球選手の寿命&成功ライン-』
  1. 2014年のMVP(最高殊勲選手)、新人王、ベストナインが相次いで発表されている。こうした発表が始まると、野球シーズンが完全に終わることになる。ここから3カ月、中身の薄いお笑い番組中心の世界に入る。野球ファンには約3カ月の暗黒の時を迎える。
  2. 2014年の日本のプロ野球の最高殊勲選手(MVP)は、セリーグが巨人・菅野智之、パリーグはオリックス・金子千尋。また新人王は、セリーグが広島・大瀬良大地、パリーグがロッテの石川歩。
  3. ご存じと思うが、4人とも投手である。そしてMVPの両人とも閉幕に向け、肘の故障が明らかにとなっている。投手の肘は生命線。いわゆる職業病である。果たして来期はどうなるか、少々心配ではある。
  4. ここで考えてみたいのは「プロ野球の選手寿命」および「成功ラインとはどのレベルか」という点。ドラフト会議が創設された1965年以降、50年にわたる選手の成績を集計・分析した面白いデータ(近畿大学・産業理工学部調査)がある。成功ラインは、投手は「通算28勝」、野手は「427安打」、ということになるらしい。
  5. そして入団選手の平均在籍年数、いわゆる選手寿命は65~03年が8.25年、04年~13年が4.5年となっている。つまり、ここ10年、球団が選手に見切りをつけるスピードが早まり、選手の成長を我慢強く待つ育成重視の球団が少なくなったという結果になっている。外国人やFA制度で即戦力を求める風潮が強くなっているのである。
  6. 要は「プロで生き残るためには入団後3~5年で一定の成績を上げる」ことが必須ということになる。その他、諸般のデータは厳しい現実を浮き彫りにしている。ドラフト6位以下の指名選手の4割以上は1軍の試合に出場できず、球界を去っている。育成選手は06年の制度開始から昨年までプロ入りし275人のうち、1軍の試合に出場できる支配下登録選手になれたのが87人(約3割)。
  7. そして1軍に定着した後もプロ野球界に残留できるのが、上記の通りで投手は「通算28勝以上」、野手は「427安打以上」の上位25%の層となる。通算28勝と聞くと達成不可能な数字には見えないが、大きな壁になっている。
  8. また昨年までのポジション別のドラフト1位指名の割合は投手が73%を占める。ドラフト1位の投手が28勝できる確率は39%。要は3人に1人の勘定。まずは5年以内に28勝できるか否かが大きな目安になる。
  9. つい最近、MLB(米大リーグ)で13年総額3億2500万㌦(約380億円)という”化け物”のような金額の契約が成立したことが報道されている。最近の野球は日米の格差もほぼなくなり、巨額のカネが動くビジネスの場となっているが、データでみる限り、プロ野球界は「30歳までには勝負が決まる」厳しい世界には違いない。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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