■今週の市場展望
著者:青柳孝直
11/04号
『特集:バブル最末期の産物「91世代」の検証』
- 時として20歳代後半から30歳代前半の社会人から「バブル時代とは何?」と聞かれることがある。単刀直入に「1985年9月のプラザ合意から1992年あたりまでのカネ余りの時代」と説明している。
- 米主導型の超円高時代を迎え、大々的な金融緩和が続けられた結果のカネ余りの時代ということにはなる。象徴的な言い方として、「深夜にタクシーを停めるのに1万円札を(ひらひらと)大きく掲げなければならなかった時代」で締めることにしている。
- 彼らは一概に「経験してみたい」と言う。だが実際に経験した者にとっては「苦い思い出ばかりの狂った時代」というしかない。最近、そのバブル最末期に就職した年代層を問題視し、「91世代」と表現するようになっている。
- 「91世代」。もう少し丁寧に言えば、1991年に社会人になった大卒社会人。バブル期の超売り手市場の中で就職活動をした最後の層で、67~69年生まれが多い。都会生活、ブランド品への愛着が強く、次の団塊ジュニアと一線を画す世代。
- 「91世代」の大学時代に起きた主たる出来事。1987年(大学1年)アサヒ「スーパードライ」発売。安田火災がゴッホ絵画を53億円で入札。日本の外貨準備高が世界一に。1988年(大学2年)東京ドーム完成(3月)。「24時間戦えますか」「くう・ねる・あそぶ」のコピーが流行。
- 1989年(大学3年)昭和天皇崩御(1月)。ソニーが米コロンビア映画を買収。三菱地所が米ロックフェラーセンター買収。ベルリンの壁崩壊。日経平均株価が史上最高値。1990年(大学4年)太陽神戸三井銀行誕生。松下電器、米MCA買収
- 1991年はバブルのお祭り騒ぎが日本全体を覆っていた。就職活動生は企業主催のパーティに参加したら一次面接に合格。内定をもらうと研修と称した旅行で拘束され、入社式は豪華客船で開催…企業は「入ってもらった」、新入社員は「入ってやった」という風潮…デートのある日に残業を命じられたら「デート優先」が37%…
- このバブルの風潮は92年から暗転する。採用枠は大幅に削られ、「92世代」以降は目の前でシャッターを閉ざされた格好となり、メディアでは「就職氷河期」の言葉が取り上げられ、組織に世代間の断層が生まれ始める。またこの頃は「インターネット勃興期」でもあった。1991年を期に、環境が大転換を始める。
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2010年あたりから「ビジネスマン35歳定年説」が言われ始めている。「知識・経験を35歳までどれだけ蓄積できたか」がその後の人生を決めるとする。こうした新時代の中で、現在46~47歳になる「91世代」のポスト(不足)問題が深刻になっている。日本伝統の年功序列制度は既に形骸化、リストラの嵐はまともに受けざるを得ない。
高度経済成長型時代の徒花(あだばな)、狂騒・バブルの時代はもう二度と来ない….
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。
連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
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FAX:03-5573-4857
書籍紹介
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ISBN:978-4-86280-068-8
定価:1,365円
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ISBN:4-89346-913-4
定価:2,520円