■今週の市場展望
著者:青柳孝直
6/27号
『特集:「鳩・菅30年の歴史」の研究』
- 菅政権の惨状は目を覆うばかりとなっている。民主党という政党はなぜにこのようになってしまったのか。その原因を探るには鳩山由紀夫と菅直人という政治家の、これまでの30年の歴史をおおまかになぞることが必要なようである。(以降敬称略)
- 最初の出会いは1980年。社会民主連合から衆院に初当選し、菅の母校である東工大に講演で凱旋した時とされている。当時の鳩山は東工大の助手だった。その鳩山も自民党から86年に衆院に初当選する。
- 94年に菅は新党さきがけに入党し、鳩山も追随する。さきがけでは鳩山は代表幹事、菅は政調会長をとして党三役を分け合うことになる。その二人が急接近するのは96年秋の旧民主党・結成時で、二人は共同代表に就任。これが「第一のエポック」である。
- 98年4月、前年末に崩壊した新進党から多くの議員が旧民主党に加わり、新しい民主党が発足する。自民党に次ぐ第二党になったものの、政権交代にほど遠かった。その民主党が転機を迎えるのは02年9月の代表選で鳩山が三選を果たして以降である。
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選挙後の人事でつまずいた鳩山が起死回生策として打ち出したのは小沢・自由党との合併構想だった。その鳩山批判の急先鋒となったのは菅だった。02年12月、鳩山は党内混乱の責任をとって代表を辞任。後任は必然的に菅だった。
その菅は、代表に就任するや豹変、小沢・自由党との合併交渉を推し進め、03年7月に合意、同9月に正式に調印する。これが「第二のエポック」である。 - その民主党が念願だった政権交代を実現するのが09年9月。鳩山が首相、菅が副首相に就任。その鳩山政権は「政治とカネ」「沖縄普天間」問題で行き詰まり、菅が民主党・二代目の首相に就任する。これが「第三のエポック」である。
- だが10年7月の参院選で惨敗すると、10年9月の代表選では菅と小沢の一騎打ちとなる。結果は鳩山・小沢を敵に回した菅が勝利することになる。この代表選を境に、自信を深めた菅と「小鳩(小沢+鳩山)」との溝は修復不可能になっていった。
- そして11年3月11日の東日本大震災および福島原発事故を経て、菅内閣不信任決議案の対応を巡って民主党の分裂危機が訪れる。これまでの流れを見れば、鳩山のツメは甘く、菅が実を取ってきてはいる。今回の不信任決議案否決も同様だった。鳩山が「菅はペテン師」と詰っても、所詮は“後の祭り”だった。
- 鳩・菅の30年をラフになぞってきてみたが、冷静に考えてみれば、「袈裟の下に鎧を着たまま、切った、切られたの世界」が続いている。まるで劇画の世界である。結論的には「政治の世界は所詮は権力闘争の場」ではある。ただ今後の日本において、今回のような国家存亡の時を迎えても延命を図る菅直人、そしてそれを取り巻く鳩山由紀夫、小沢一郎という政治家を必要とするであろうか。空しさだけが残るのみである。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。
連絡先:
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書籍紹介
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ISBN:978-4-86280-068-8
定価:1,365円
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ISBN:4-89346-913-4
定価:2,520円