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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

2/14号

『特集:相撲は日本古来の神事か、スポーツか』
  1. 日本の大相撲界が内包していた根幹的な闇を、携帯電話という新時代の利器が明確に炙り出してしまった。携帯画面に映った「カネと打算だけの文字」が、日本独特の“情”の議論の余地さえ奪ったしまった。
  2. 日本の相撲は「スポーツとしてのフェアプレー」と、そして「日本の伝統=神事」としての、共に“正義”の狭間で、「日本独自の文化の一環」として捉えられてきた。従って、スポーツではありながら、相手を慮る“情”の存在も暗黙のうちに容認されてきた。
  3. それが、意識的に相手に勝ちを譲るとする「故意による無気力相撲=“八百長”」という流れになった。そしてその暗黙の前提の中で、「恒常的にカネが動く世界」が出来上がった。21世紀になって、こうした純日本的システムが俎上に上がっている。
  4. 「財団法人」。一定の公益上の目的のために提供された財産を基礎として設立された法人。日本相撲協会は日本政府から財団法人の認可を得ている。そして2008年制定の新公益法人制度によって、既存の公益法人である財団法人、社団法人は、13年11月末までに公益法人か、一般法人へ移行される。
  5. 新公益法人の認定は、事業の50%以上が公益目的であることが重要な条件となっている。日本の大相撲は興業(エンターテイメント)の要素が強いものの、一方で「国技」とも呼ばれ、「本場所開催が日本の伝統、文化の継承である」という見解に、日本国民は全面賛成とはいかないまでも、渋々ながらも納得はしてきた。
  6. ところがバブル時代以降、年寄り名跡などの金銭面での不透明さや、反社会勢力との関係などが明るみに出て、新公益法人認定への障害と言われて続けてきた。そしてここにきての八百長騒ぎで、現在の財団法人の認可取り消しさえ言われ始めている。
  7. 認可取り消しとなった場合、相撲協会は解散、国技館などの残余財産は処分されることになる。相撲協会の定める寄付行為では「類似の目的を有する公益法人に寄付する」とあるが、そうした類似の法人は存在しない。従って、日本国に没収されることになる。
  8. 一方、税制で手厚く優遇される公益法人をあきらめ、一般法人へ移行するのは難しくはない。ただその場合、これまで財団法人として恩恵を受け、保有財産を公益目的に使い切るか寄付することを求められる。長期間の分割も可能だが、相撲協会は国技館などの莫大な資産を保有するため、問題は深刻なのである。
  9. 考えてみるに、ここ10年、横綱・大関陣はモンゴルを中心とした海外勢に占められている日本の大相撲は、本当に日本の国技と言えるかどうか。少々キツイ言い方をすれば、大学全入時代の現在においても、日本の相撲社会は、高校教育さえまともに終了していない“(一般的な)思考・常識能力に欠ける”人間の集団になってしまっている。

    今回の騒動、果たして納得できる正論を出せるか否か。相応の時間がかかりそうである。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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