■今週の市場展望
著者:青柳孝直事務所
10/13号
『特集:「(自民主導の)土建国家の終焉」を検証する』
- 8月の衆院選挙で民主党が大勝し、半世紀にわたる自民党政治が終焉した。何かホッとすると同時に、時代が変わったという一抹の寂しさは否めない。振り返って自民政権の大きな特徴は「中央官庁を媒介とした公共事業中心の利益配分システム」だった。
- 結果論から言えば、このシステムによって「戦後の経済成長の果実」は全国に行き渡り、地方を潤すことになった。ただ同時に、「自民党の利権と集票のシステム」を完成することになり、世界にも希な「土建国家」を生み出すことになった。
- 自民全盛時代をもたらした公共事業のドンとして君臨したのが故田中角栄だった。同氏が構築した根幹のシステム(財源立法)は、高度成長時代の日本にドンピシャリと“はまる”ことになった。
- 当該年度の揮発油税収額を道路整備の財源として計上する「揮発油税法(昭和28年)」、道路は全部無料とする原則を覆した「有料道路法(道路整備特別措置法)(昭和27年))大正8年制定の道路法を全面改定した「現行道路法(27年)」の道路三法は、特別会計の枠組みに守られ、際限なく道路を造り続ける原動力となった。
- また右肩上がりの経済高度成長によってもたらされた財源(余裕資金)は、道路以外の河川・ダム、港湾、空港、土地改良、下水道の公共事業に対しても、ランダムで無尽蔵な大盤振る舞いを可能にしていった。
- このような状況下で族議員が暗躍する土壌ができ、中央官庁の媒介と政治家の口利きによって公共事業は全国にばらまかれた。結果的として、自治体と公共事業に巣食う建設業者等を潤し、一方で政治家には利権と集票という恩恵がもたらされた。
- かくして世界でも希な「政官業癒着」の構図が出来上がり、高コスト構造や税金の無駄遣いが当たり前になった。そして一連の公共事業は地方のインフラを急速に整備はしたが、過剰になり始めた時点で、地方の自立や発展に結び付かなくなっていった。
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こうした「土建国家」の究極の着地点が新幹線整備だった。全国の道路の整備がほぼ終わり、それではと取り掛かったのが、地方の新幹線整備だった。1990年以降、日本各地に新幹線(東北・上越・九州新幹線など)が次々に完成していった。
「2時間以内で最新流行のものを買える場所(東京、博多など)に行ける」のはある種の流通革命だった。それは小売業界を手始めに、地方経済の衰退へと追い込み始めた。 - 21世紀に入って、プライベート・ブランド(PB=自主企画)やインターネットの普及といった(世界的な)構造変化が新たな価格破壊を起こし、「1000円未満ジーンズ」「20円飲料」に代表される「価格破壊時代」になり始めている。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。
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書籍紹介
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ISBN:978-4-86280-068-8
定価:1,365円
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ISBN:4-89346-913-4
定価:2,520円