■今週の市場展望
著者:青柳孝直事務所
9/24号
『特集:イチローのMLB記録達成と、日米国民の価値観の違い』
- 現地時間9月13日(日本時間14日)米大リーグ(以下MLB)、シアトル・マリナーズのイチロー外野手(35=本名:鈴木一朗)は、テキサス州アーリトンで行われたテキサス・レンジャーズとのダブルヘッダー第二試合で遊撃に内野安打を放ち、MLB史上初の9年連続の200安打を達成、1894年~1901年にウィリー・キーラーがマークした8年連続を108年振りに更新した。
- イチローの名前がMLBで確立したのは2004年、1シーズン262安打を記録、それまでのジョージ・シスラーの257本を抜いて84年振り(当時)にMLB記録を更新した時からである。しかし、首位打者のタイトルがある打率に比べ、チーム事情によりばらつきのある安打数は、長らく記録を争う項目に取り上げられてはこなかった。
- MLBでは1998年まで17年にまたがる2632試合の連続出場をしたカール・リプケンの記録があるが、「連続性」「継続性」をテーマにした記録を余り注目(称賛)しない傾向にある。年間162試合行う現在のMLBでは、「全試合に出場することは、商品としての選手の寿命(=価値)を減少する」との考え方が徹底しているからである。
- 今回の新記録に号外が出るなど、日本中が大騒ぎしているが、米メディアの報道は意外に淡々としている。NYタイムズでは、米国では本塁打などの長打が好まれる傾向を指摘、内野安打が約3割を占めるイチローは評価され難いと論じている。
- 記録に対する価値観の相違、および(韓国・イ・スンヨプ(現巨人)の年間56本の本塁打記録を、日本が無視したように)外国人による記録達成を良しとしない側面は否めない。
- 安打数に関する記録としては、ピート・ローズの(通算)10回の200安打達成、および通算4,000安打などがあるが、一連の安打数という項目に関しては、米国民はもはや“諦めの境地”には違いない。
- WBCでも日本に二連覇を許し、(米国の)元祖・野球大国の名が揺らいでいる。9月11日(現地)のNYヤンキース、デレク・ジーター内野手のルー・ゲーリックの球団最多安打2721本の更新を、殊更に必要以上に騒いでいるが、多分それも日本(の野球)に対する“悔しさ”なのだろう。
- 実は自分もイチローの「走りながら打つ」スタイルが余り好きではなかった。ドカンと打ち放つ特大の本塁打に魅力を感じていた。しかしイチローの“オンリーワン”のスペシャルな技術こそ、新時代の混沌とした世界には必要であろう。ガタガタ言うのは既存の常識論を滔々と述べる者ばかりである。
- かくしてイチローは、10年連続200安打や、通算4,000安打もやってくれると思う。本場米国の(多少の)誹謗中傷があっても、イチローの「連続性」「継続性」を旨とする記録は、今後100年経っても破られない永遠不滅の燦然たる記録だと思う。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。
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書籍紹介
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ISBN:978-4-86280-068-8
定価:1,365円
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ISBN:4-89346-913-4
定価:2,520円