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■今週の市場展望

著者:青柳孝直事務所

9/15号

『特集:「ドブ板選挙大勝利」の影響と今後の日本』
  1. 8月30日の衆院選挙から2週間が過ぎた。連日連夜の報道で少々食傷気味ではある。しかし今後の日本、引いては今後の相場動向を考える時、選挙結果の分析は外せないテーマである。今週は「田中流ドブ板選挙の影響」について考えてみたい。
  2. 菅義偉・自民党選挙対策副委員長は「自民党の賞味期限は小泉政権誕生前に終わっていたのかもしれない」と述べた。確かに「自民党をぶっ壊す」と宣言した人間が総理総裁に選ばれること自体が、自民党の賞味期限が切れていたということにはなる。
  3. 「政党の賞味期限が切れる」とは、その政党に「人材がいない」「人材が集まらない」「人材が育てられない」のないないづくしの状態になったということである。党を率いるリーダー不在だけではない。気がつけば、ひと癖もふた癖もある策士、寝業師、戦略家の類の、少々“きな臭い”人種もいなくなっていた。
  4. 自民党に人材がいなくなった理由。ポイントは「小選挙区制」「派閥の解消」である。県(都)議会議員並の小さな選挙区の中で、政治家の生命をすべて決定してしまう小選挙区制においては、ドブ板選挙の基本に徹するか否かで勝負が決まる。結局、県(都)議会議員レベルで国政を託す人物を選択するのが現在の日本の国政選挙である。
  5. 政策演説抜きでひたすら選挙区の隅々まで走り回って、握手とお辞儀、そして土下座をも厭わないドブ板選挙戦術は、故田中角栄元首相が編み出した戦術である。その田中流直伝の選挙術を持ちこんだのは家元直系の愛弟子、剛腕・小沢一郎だった。
  6. 自民幹部のお歴々の選挙区に、小沢ガールズと揶揄された美女軍団が送り込まれた。あたかも(忍者の)“くの一”戦法のごとく、流儀に忠実に、かつしつこく田中流戦法が駆使され、大勝利した。田中流選挙術で勝ち上がった数、150人超。
  7. また派閥の解消も自民衰退の要因となった。(良い意味でも悪い意味でも)派閥内の権力争い通じて、中小グループを率いることを学び、その過程で総理総裁への声望を勝ち得ていくという「汗をかく」システムが機能しなくなった結果、自民党の中に次世代あるいは次々世代の総理総裁候補が育たなくなっていった。
  8. 結果的に「政策抜きの政権交代」を連呼した民主が大勝利した。しかし民主党を含む日本の野党は、口先だけの反論はできても、責任政党として国政を仕切った経験がない。同様のコンテンツで出発した細川政権は8か月の短命で終わった。
  9. 官僚政治打破とのスローガンが掲げられている。しかしドブ板手法で勝ち上がった議員に、官僚以上の知識・能力があるとは思えない。ドブ板選挙をやれば勝てる、あるいは勝てたという事実が今後の日本の将来を暗澹としたものにしている。

    今回の衆院選挙で日本国民に与えられたテーマは、「自民が完全にぶっ壊れた」ことで、「日本がぶっ壊れ始めた」可能性を考えることである。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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