■今週の市場展望
著者:青柳孝直事務所
7/07号
『特集:原油高騰による世界経済への影響 ―インフレ&株安拡大―』
- 長引く原油高で、世界各国はインフレ対応に我慢比べの様相見せる展開となっている。イタリア政府の構想が象徴的。石油会社に増税し、国民に食料・電気代割引券を配る。称して、中世英国の義賊にちなんだ「ロビンフッド税」。
- ドイツでは7月から年金を増額することを決定。また通勤時のガソリン代を軽減する通勤費控除の拡大案が浮上。フランスではサルコジ大統領がガソリン税軽減を提唱。独仏など大陸欧州が、国民の痛みを緩和する「鎮痛剤」でインフレの嵐が通り過ぎるのを待つのは、1970年代の石油危機後の主要国の食料・燃料高が一時的だった経験による。
- こうした一連のインフレに戸惑う大陸欧州のスタンスは、不良債権処理を先送りした90年代の日本に似てはいる。地価回復期待し、時間と税金を空費した日本は構造改革が遅れ、グローバル化も後手に回った。しかし、今回は根幹の要因が異なっている。
- 一方、世界の株価の値動きは資源国と非資源国で明暗が分かれた。全世界の動向を示す「MSCI世界株価指数(48カ国・地域ベース、現地通貨建て)」は、昨年比14%の下落となった。こうした中で上昇したのは南アフリカ、カナダ、ロシア、ブラジルの4市場で、いずれも資源国である。
- 一方、売られたのは原燃料を輸入し、工業製品を輸出してきたアジアなどの新興国である。輸出先の米国経済に急ブレーキがかかる一方で、資源高・食料高がインフレにつながり、企業業績や個人消費に停滞色が強まった。
- 昨年には過去最高値を付けるなど相場が過熱、日本の個人投資家間でもブームとなった中国株は、例えば上海総合指数が48%の下落。6月だけで20%下落した。中国の個人投資家の投機的売買が中心だったため、熱が冷めた途端、“化けの皮”が剥がれた。
- BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の後を追う成長国とはやされたベトナムでは、年20%を超えるインフレに加え、国営企業などの民営化に伴う株式売り出しが急増、市場全体の歪みが目立っている。またインドのSENSEX指数は6月だけで18%の下落で、16年振りの急落となった。折からの原油高がインフレとなって跳ね返り、国内経済にブレーキをかけた。
- かつては先進国が景気浮揚のために自国通貨安を誘導し、輸出でテコ入れする政策を採った時期もあった。しかし現在起きているのは工業製品ではなく、一次産品のインフレである。通貨安は原材料高に直結し、“負の効果”の方が大きい。世界各国間で、背負わされた重荷の押し付け合いの様相を呈している。
- 膨大な投機マネーが先物市場に乱入し、暴騰を続ける今回の原油相場は、近い将来大崩壊すると思われる。ただ根幹の方策を間違えば、原油バブル崩壊の前に、各国の経済がクラッシュする。原油=150㌦を目前に、正念場には違いない。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。
連絡先:
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FAX:03-5573-4857
書籍紹介
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ISBN:978-4-86280-068-8
定価:1,365円
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ISBN:4-89346-913-4
定価:2,520円
















