■今週の市場展望
著者:青柳孝直事務所
5/07号
『特集:日本の株式市場からインサイダー取引は消滅するか』
- 4月22日、証券界のガリバー・野村証券の中国人社員が、インサイダー取引による金融商品取引法違反で逮捕された。事件発覚のきっかけとなったのは、昨年後半の金融庁・証券取引等監視委員会(以降=監視委)による市場監視だった。
- 野村証券が絡むM&AやTOB(株式公開買い付け)の情報が公表される前後に、集中的に売買された株取引を調査したところ、中国人名義の注文が複数見つかった。監視委は、野村証券内部に協力者がいるとみて内偵を始め、同社企業情報部に、名義人と京都大学留学生時代に面識ある中国人社員がいることを突き止めた。
- 監視委によると、逮捕された中国人社員ら三人によるインサイダー取引の疑いのあるのは21銘柄に上り、いずれも野村証券・企業情報部が扱ったM&AやTOBの内部情報を社員が入手、公表前に知人に伝えて売買、4千万円超の利益を得たとしている。
- ここ5年に問題となったインサイダー取引を上げてみると「2002年11月:大和証券SMBCの元部長が、ニチメンによる子会社のTOBを事前に知る」「2003年7月:野村証券の元課長が、ニチメンによる子会社のTOBを事前に知る」「06年2月:日本経済新聞社の広告局の社員が、法定広告の情報を公表前に入手」「08年1月:NHKの元記者ら3人が、放送前の資本提携に関するニュースを入手」「08年3月:新日本監査法人の公認会計士が、担当していた複数の企業の株式を売買」
- 監視委は1990年代からの不良債権処理が一服したことを受け、金融行政の軸足を、「銀行などの経営健全性維持」から「透明で公正な市場形成」に移行してきた。監視委では不正取引の監視を強化しているが、監視委ならずとも「発覚した事案は氷山の一角」との見方をされても致し方ない状況にある。
- また日本の管理体制の不整備も歴然としている。日本の監視委は2008年3月時点で、地方の財務局を含め約600人の体制。米証券取引委員会は約3,800人で、市場規模は違うとは言え、陣容の差は明らかである。
- 今回逮捕された中国人社員の場合、監視委が多額の利益を上げる中国人の名義口座に目を付け、接点のある容疑者を割り出すのに、さほど時間がかからなかったとしている。「日本の市場監視は甘いと高を括っていた」のは間違いない。
- 従来日本では、“株式投資”との呼び方で、本来は相場である株取引を容認するスタンスを通してきた。しかし一会社の株式の上下で損得の出る株式相場には、当然ながらインサイダー取引が蔓延っていた。こうした日本的な土壌を簡単に粛正できるか否か。
- 筆者は為替市場という一個人では動かすことが不可能な膨大な金額の動く市場と比して、取引金額に限界のある個別株式市場における閉鎖性・危険性の問題を提起してきた。今更という感のする事件ではある。監視委の充実を図るしかないが、問題の根は深い。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。
連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
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TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857
書籍紹介
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ISBN:978-4-86280-068-8
定価:1,365円
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ISBN:4-89346-913-4
定価:2,520円
















