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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

5/14号

『特集:色濃い「安倍疲れ」の様相』
  1. 黄金週間も終わってみれば、あっという間。今年は暑い日と、寒い日の温度差20度のゆさぶりをかけられた。さすがに堪える。そんな天候不順気味の黄金週間、日経が(嵐を呼びそうな)2ページ見開き記事を掲載した。大きな写真付き「岸田文雄大特集」。
  2. “次の次の次”の次代のホープ・小泉進次郎自民党筆頭副幹事長もこのような大胆な扱いをされたことがない。広島カープがどうの、趣味がどうのと、CM気味のイメージ戦略。偏った記事を出さないあの日経が、見るにみかねての大胆な提案か(!?)。
  3. 中国の習近平国家主席は任期の撤廃、ロシアのプーチン大統領は選挙の圧勝で半永久的な権力を握った。西側の経済大国ではメリケル独首相の12年がトップ。そして我が日本の安倍晋三首相は5年と、堂々長期政権の仲間入り。だが西側の二人は支持の低下の直面している。政権の安定度で国家主義が民主主義に勝るという珍現象だ。
  4. 1年前、総選挙前のドイツで難民政策に窮したメリケル首相を、海外のマスコミは「メルケル疲れ」いう呼び方をした。そして今度は「安倍疲れ(Abe Fatigue)」とし、秋の自民党総裁選挙の動向を危ぶむ見方を明確にし始めた。そして金融市場では「アベグジット(AbeとExit=退陣の造語)」という言い方さえし始めている
  5. もりかけ問題や決済文書の改ざんは、時間と共にほとぼりが冷めるような簡単なものでない。国有地売却に“(官僚の)忖度”を通して、安倍首相や夫人の関与は明白であり、結果的に政と官の歪みが明確になっている。低下した信頼を戻すのは簡単ではない。
  6. 日本の景気は第二次安倍政権が誕生した2012年12月以来、景気(主として株価)は拡大してきた。根幹にあるのは黒田東彦日銀総裁主導の大規模な金融緩和。だがアベノミクスと呼ばれる一連の政策が時間と共に変質し始め、方々で息切れ感が目立っている。結論的に言えば、「まず経済原論ありき」の方策が現実と乖離している。
  7. 働き方改革でも、入り口である裁量労働制の対象拡大を、説明のデータの不手際で引っ込めてしまった。あれもこれもと欠陥が目立ち始め、「アベノミクスの終わりの始まり」という皮肉った言い方をされ始めている。
  8. そして一時は持て囃されたトランプ米大統領とのゴルフ外交も、安倍内閣の足元の危うさを感じ取ったトランプ政権は、秋の中間選挙を控え、日本を度外視した保護色の強い政策を打ち出しそうな気配である。最後の頼みの「(対北朝鮮)の拉致問題」も、トランプ政権が本気になって取り組むとも思えない。言ってみれば、四面楚歌状態である。
  9. 自民党総裁選挙で3選を果たし、21年まで政権を維持する(=東京五輪は安倍内閣で)との野望も風前の灯。下馬評に上がる、岸田文雄政調会長、石破茂元防衛相、小泉進次郎筆頭副幹事長のいずれが新首相になろうとも、現状が急速に変わるとは思えない。だが、とりあえずは「気分を一新したい」のは事実。今年の秋の嵐は避けられそうにない。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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