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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

2/06号

『特集:「31年振りの貿易赤字」を検証する』
  1. 1月25日、財務省が発表した貿易統計(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆4927兆円の赤字となった。第二次石油危機による原油価格高騰で輸入額がかさんだ1980年以来31年振り。
  2. 日本の貿易収支が赤字となった背景には、東日本大震災という突発的な要因に加え、円高定着による産業の空洞化などの構造問題も潜んでいる。海外経済やエネルギー価格の動き次第では2012年以降も貿易赤字が定着すると共に、海外からの配当収入なども含めた経常収支が赤字になる可能性も現実味を帯びてくる。
  3. 日本の場合、海外からの配当金などからなる所得収支の黒字が年10兆円超あり、即座に経常収支が赤字になるわけではない。ただ貿易赤字の膨張が続けば、話が違ってくる。日本の原発が全て停止した場合、貿易赤字が膨らんで所得収支を上回るようになり、2017年度には経常赤字に転じるとの試算もある。
  4. ここで考えなければならないのは、戦後輸出立国の道を歩んできた日本経済の構造変化である。いわゆる「マーチ化」現象である。円高が定着した結果、日本市場向けであっても海外生産に切り替えた日産自動車の小型車「マーチ」のパターンである。
  5. 2011年7~9月期の日本企業の海外現地法人の逆輸入額は約2.2兆円。過去最高だった08年7~9月期に並び、なお増える勢い。アジア諸国に比べて高い人件費や法人税率に、歴史的な円高や電力料金の値上げが追い打ちをかける。競争力低下に直面する輸出製造業は海外生産を選択せざるを得なくなっている。
  6. 2005年、政府の経済財政諮問会議がまとめた「日本21世紀ビジョン」では「2030年度には貿易赤字は赤字に転じる」としている。しかも医療関連サービス等の内需の拡大による「良い輸入増」を想定した。しかし現実は円高や空洞化による輸出不振と、電力危機に伴う燃料輸入増により、予想は的中したものの、時期が大幅に狂ってしまった。
  7. 米経済学者キンドルバーガーらが唱える国際収支の発展段階説によると、貿易赤字だが所得収支の黒字で経常黒字を維持する状態は「未成熟な債権国」から「成熟した債権国」への移行を意味するとする。しかし日本の場合、成熟型の収支構造への移行は20年も早まった。そして一方で、前提となるグローバル化は遅れている。
  8. そしてまた大きな問題が待ち受ける。国内総生産(GDP)の2倍の政府債務残高を抱えながら、国債利回りが低位安定する日本。最大の強みは国内投資家による消化割合の高さであった。経常赤字国のイタリアやスペインでは、海外投資家の国債保有高は4~5割。黒字国の日本は1割。だが経常赤字に転落すれば、国内資金だけでは財政赤字を埋めきれない。海外投資家に日本の存続を任せなければならない時代が確実にやってくる。
  9. かくして日本は、「想定外」の道を着々と進んでいる。冷静に判断すべき時期である。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
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TEL:03-5573-4858
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