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■今週の市場展望

著者:青柳孝直事務所

9/10号

『特集:世界の為替市場を撹乱する“ミセス・ワタナベ”』
  1. 世界の為替市場が「日本のミセス・ワタナベ」の動向を注視するようになっている。さて、世界のヘッジファンドすら一目置くミセス・ワタナベとは一体何者?“日本の主婦投機軍団”に対し、海外の報道機関が“よくある名前”として使い始めた名称である。
  2. 業界関係者によれば、日本の証拠金取引の差し入れ証拠金の総額は8,000億円~1兆円、外貨買いの残高は15兆円から20兆円とされている。例えば1兆円の証拠金残高があれば、20倍~30倍のレバレッジを駆使したとして、計算上では最大30兆円の効力を発することになる。世界の為替市場にとっても、30兆円規模のポジションは確かに威力ある。
  3. そして、主婦軍団の主たる戦略は「(闇雲のorそれ一筋の)円売り・外貨買い」。日本で馴染みのあるドル円、豪ドル円などに対し一斉に円売りを仕掛ければ、世界的な有名銀行が束になってもかなわないという構図である。
  4. この夏の世界的な市場混乱局面では、そうした高い倍率(レバレッジ)を駆使している主婦軍団が一斉に損失回避に走り、結果、システムがパンクしたり、相場自体が考えられないような激しい動きとなり、正しかるべきチャートを目茶苦茶にクラッシュさせた。
  5. 最近の一般的な風潮として、セレブ風の30~40歳中心の主婦(or独身女性)が「わたしにもできます!」とばかり、例えば「月100万円儲ける私の方法」等といった、全くの素人発のノウ・ハウ本が人気である。小難しいことは一切考えず、シンプルであることが基本。当たり前のことを当たり前に言ってはいるものの、端的に言えば“アブナイ”。
  6. 金融のグローバル化で、為替取引が一般家庭に浸透していくことは悪いことではない。しかし基本中の基本のファンダメンタルや、チャートをも無視し、競馬やパチンコと同様のノリで“当たるも八卦、当たらぬのも八卦”的考え方で為替取引に勝ち続けることは不可能である。そうした考え方、やり方は「相場or勝負に対する冒涜」である。
  7. この8月、外為証拠金取引で3年間に約4億円を稼ぎ、約1億4千万円の所得税を申告しなかった東京都内の主婦が有罪判決を受けた。ただ現在の日本では、現状のような金融取引に係る法制の整備が遅れているのも事実である。問題点は以下の2点。
  8. 「金融税制全体が、年を超えて売買損益を通算できる方向で整備されてきてはいるものの、その根幹の考え方が浸透していない」「外為証拠金取引でも、東京金融取引所が05年7月に始めた“クリック365”だけは繰り越しはできるが、取り扱うのは13社だけ」
  9. 仮に07年に1億円儲け、08年に1億円を損失した場合、差し引きの収益はトントン。しかし納める税金は「クリック365」ならゼロ、それ以外なら累進課税で最大5千万円。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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