■今週の市場展望
著者:青柳孝直
7/05号
『特集:菅首相の掲げる「夢物語」』
- 小鳩(小沢+鳩山)政権の後を受け、満を持して登場した感のある菅直人新政権だった。その所信表明演説を期待した。しかし全くの期待外れだった。顔を上げさえしない原稿の棒読みだった。読むだけだったら誰にだってできる、と思った。
- 7月11日の参院選挙を控え、各党党首の演説は聞きたくなくても聞こえてくる。菅首相の演説は、その昔、大学キャンパスで聞いた学生運動家のアジ演説に聞こえてしようがない。耳障りは確かにいい。が、一旦中身を吟味し始めると、それが実現性の極めて薄いものであることが分かってくる。キレイごとの羅列、いわゆる「夢物語」である。
- 6月27日(日本時間6月28日)、カナダ・トロントで開催された20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)は、首脳宣言を採択して閉幕した。「成長に配慮した財政健全化」との基本原則を打ち出し、先進国については「2013年までに少なくとも財政赤字を半減させる」との数値目標が明記された。
- ただ日本については目標達成を強制しない「例外扱い」とし、財政の大幅悪化を踏まえた異例の措置がとられた。国際的にみて財政悪化の度合いが際立ち、健全化を急ぐ欧米から置き去りにされた格好となった。ロイター通信は「他の先進国に比べて『質の悪い財政状況』を浮き彫りにした」と伝えている。
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日本の2010年度の財政赤字は40兆円を超える。他の先進国と同様に2013年までの「赤字半減」を実現するには、20兆円の「歳出カット」か「増税」が必要となる。
仮に消費税で手当てする場合、消費税率1%の引き上げは約2兆5千億円の増収になる。単純計算で、歳出を増やさず、消費税を8%程度引き上げれば、ようやく先進国並みの目標を達成できる。菅首相は消費税を含む税制改革について「2010年度内に改革案をまとめたい」としている。だが参院選を控え、具体的な議論は進んでいない。 - 2008年のリーマン・ショック後、世界各国は財政・金融政策を総動員し、経済と金融危機を封じ込めた。ひとまず景気は底入れしたが、民間が抱えたリスクは政府に移転され、結果的に財政に膨大なツケが残った。
- 現時点での最大の焦点は「政府債務の信認危機」である。英独などは矢継ぎ早に財政再建策を打ち出している。それは市場の狙い撃ちされないための自己防衛なのである。
- 各国の対応には市場の監視の目が待ち受ける。また当然ながら有権者の厳しいチェックも受けなければならない。先進国で市場や有権者が注視するのは、構造改革を掲げるだけでなく、それを実行し、新たな成長を切り開いていく力である。
- 世界の主要国で群を抜く政府債務を抱え、成長のための青写真を描けずにいる日本は、世界から見放されつつある。今回の「例外扱い」は、アジアの中心が完全に中国移ってしまったことを如実に示している。「夢物語」を聞いている暇はない。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。
連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
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TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857
書籍紹介
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ISBN:978-4-86280-068-8
定価:1,365円
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ISBN:4-89346-913-4
定価:2,520円
















