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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

6/28号

『特集:人民元市場の自由化と今後の金融政策』
  1. 6月19日、中国人民銀行(中央銀行)は「人民元相場の弾力性を高める」との声明を発表した。6月26日からカナダで始まる20ヶ国・地域(G20)首脳会議を前にして、(渋々ながら)人民元改革に積極姿勢を見せた格好となった。
  2. 2005年7月、中国は人民元レートの形成に市場機能を取り入れるための新通貨制度、ドル、円、ユーロ等からなる通貨バスケットを参考にした管理変動相場制を採用すると発表している。とは言え、実際にはドルとの結びつきが強かった。
  3. 当初1ドル=約8.28元に固定されていたレートは、その後3年間で約2割上昇している。また1日の変動幅は当初の0.3%から0.5%に拡大した。ただ人民元の過度の相場変動(=人民元高)を防ぐための相場介入の制度維持されている。08年夏以降は、断続的な為替介入により対ドル相場を6.83元前後でほぼ固定してきた。
  4. こうした(時代の趨勢に逆行する)固定相場は、2008年夏以降の世界的な金融危機においても中国国内の企業業績を支えることになった。ただ一方で、自由主義経済特有の自然淘汰による企業選別は進まず、競争力のない企業が温存されることになった。結果的に、安い賃金に頼ってきた輸出産業は相次ぐ労働争議で、大きな転機を迎えている。
  5. 断続的な市場介入と、好調な対外輸出によるドル資産の増加も顕著で、10年4月末時点で保有する米国債残高は9002億㌦(約82兆円)と世界最大になっている。米国債残高の大小でその国を位置付けするのも時代遅れの感がしないでもないが、中国は今や世界経済を引っ張る「機関車」ではある
  6. 国内総生産(GDP)は2010年に日本を抜き去り、約5兆3600億㌦となり、中国にインド、ブラジル、ロシアを加えたBRICs4ヶ国では10兆㌦超となる。毎年韓国のGDP分が加わるペースで成長しており、2015年には米国に迫る計算になる。
  7. 米国では「人民元は対ドルで約40%も過小評価されている」「現状を放置すれば貿易不均衡につながる」との批判が強まっている。この道はいつか来た道。日本も1960~1970年代も同じような批判を受け、改善を迫られた。
  8. 200円を超える円安が続き、技術大国・ニッポンは飛躍的に成長していった。米国債残高も世界最大だったのも全く同じ。ただ違うのは日本は日米安全保障条約により、占領国・米国の庇護の元で、米国のいいなりになった点である。しかし中国に米国の庇護は不必要である。要は「中国は米国の言いなりにはならない」ということである。
  9. 近代金融システムは米欧が中心になって形成されてきた。しかし中国という異質な国が徐々に影響力を持つようになって、今後の金融システムの将来像が見えなくなっている。「中国の世界制覇」の可能性も見え始めている。世界経済のアンカー・米国に昔日の力強さは見られない。さしあたり欧州の雄・ドイツあたりに頑張ってもらうしかないが…
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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