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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

3/16号

『特集:「日本国債という爆薬」がいつ火を噴くか』
  1. 金融市場では「(旧)大蔵省はオオカミ少年だ」という声は30年前からあった。「やがて財政は破綻し、金利は上昇する」。歴代の官僚たちが言い続けても危機はこなかった。国民は安心して警告に耳を貸さなくなった。
  2. ここにきて、鳩山政権の財政規律は読めない、経済成長率や貯蓄率の低下、人口減など、環境は全て悪い方向に動き出した。「どのくらい凶暴なオオカミが、いつやってくるか」という大きな問題が真剣に議論され始めている。
  3. 財政赤字の拡大から国債の格下げをされたギリシャや格下げ懸念のあるスペインでは、海外資本が国債から逃げ出し、長期金利の上昇を招いた。かたや日本では、外貨建ての国債を発行しておらず、また国債の93%は国内の金融機関や個人が保有する。従って日本はギリシャのようにはならない、だから安全だ、というのが一般的な見方である。
  4. ところが海外の投機筋は、日本を“新衰退国”とみなし始めている。日本を衰退国と見るのが妥当かどうかは別にして、日本国内だけで日本国債を消化できなくなる日が近づいているのは事実である。
  5. 日本の個人の金融資産は、個人の負債を除き1,065兆円(09年10月現在)。一方で、国と地方の長期財務残高は825兆円で、今後も増え続ける。家計貯貯蓄率は1990年代には10%を超えていたが、07年には2.2%に下がった。貯蓄を取り崩して生活費に充てる高齢者の割合が増加したからである。
  6. 個人が抱える(住宅ローン等の)負債を勘定に入れれば、日本国民の資産と日本国の借金がトントンになったとの見方が妥当である。そして2010年代に入れば、日本国民の個人資産の全部を充てても公債を買い切れない事態に陥る。
  7. こうした状況を背景に、市場では早ければ来年(2011年)から日本国債の長期金利が上昇し始めるとの見方が台頭している。現在1.2%台の10年物国債利回りが米国と同様の3.6%台の上昇したとすれば、利払費は(新規国債を発行しなくても)約12兆円に膨らむ勘定となる。これは09年度の消費税額9.4兆円を上回る額となる。

    今や日本国・借金のGDP比は199%と、今問題になっているギリシャの111%をも上回り、先進国では最悪(世界の第一位はジンバブエ。日本は総合第二位。米国は61位)。またこの数字は太平洋戦争末期と同水準である。
  8. 悲観的材料ばかりに焦点を当て、日本を敢えて悲観的に見るつもりはない。ただ会計年度末の3月になればあちこちで意味もないような道路工事が始まり、与えられた予算を使い切ろうとする“百年一日”のスタンスがどうしても解せないでいる。
  9. ギリシャ、ギリシャと騒いではいるが、「ギリシャは“明日の日本の姿”」である。もう少し現実的に、冷静に日本の実態を見るべき時期のように思うが…
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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